経営相談Q&A
「利益は出ているのに、お金がない」損益計算書だけでは分からない資金繰りの話
決算書を見ると利益は出ている。それなのに、なぜか銀行口座のお金は増えていない。
今回は、そんな疑問をきっかけにセカンドオピニオンとしての財務相談に来られた社長との面談から、「利益」と「手元のお金」が一致しない理由についてお話しします。
社長
利益は一応出ているんです。でも、思っていたより全然お金が残っていなくて。
どこからおかしくなったのか、自分でもよく分からなくなってしまいました。
税理士
決算書を数期分並べて見ると、まず目立つのが棚卸資産の増加ですね。
以前と比べて在庫として持っている資産がかなり増えています。
在庫が増えるということは、お金が在庫の形に変わって、その場に固定されているということでもあります。
さらに借入金や支払利息も増えているので、利益が出ていても手元のお金が増えにくい構造になっています。
社長
一応シミュレーションはしていたんです。
利息なんかも見ていたつもりなんですけど、なんでここまでお金が減っていることに気づかなかったんでしょう。
税理士
大きいのは、借入金の元金返済が損益計算書には出てこないことだと思います。
利息は経費なので損益計算書に出ますが、借りたお金そのものを返す元金返済は経費ではありません。
ですから、損益計算書では利益が出ていても、毎月元金を返していけば、実際の銀行口座のお金は減っていきます。
利益だけを見ていると、ここが見えにくいんです。
社長
じゃあ、損益計算書をちゃんと見ているだけではダメなんですね。
税理士
そうですね。
特に、借入が多い会社や、先にお金を出して在庫を持つ商売では、利益と一緒にキャッシュフローを見る必要があります。
極端な話、損益計算書では黒字でも、銀行口座のお金がなくなれば支払いができなくなります。
いわゆる黒字倒産もあり得ますので、一定規模になれば資金繰り表は作っておいた方がいいですね。
社長
資金繰り表って、結構難しいものを作らないといけないんですか?
税理士
最初から複雑なものを作る必要はないと思います。
まずは、「何月にいくらお金が出て、何月にいくら入ってくるか」を並べるだけでもかなり違います。
特に在庫を抱える商売では、先に仕入れや取得代金を払って、その後に売上が立ち、さらに実際の入金はその先になることもあります。
支出した日から、実際に現金として戻ってくるまで何か月かかるのか。そこを見えるようにしておくことが大切です。
社長
毎月の試算表が出るのが少し遅れることもあるんですが、それでも作れますか?
税理士
簡易的な資金繰りなら、試算表を待たなくても作れます。
今の銀行残高をスタートにして、社長の頭の中にある「この月に大きな支払いがある」「このあたりで入金がある」という予定を一覧に落としていけばいいです。
重要なのは、完璧な表を作ることよりも、数か月先に現金がどれくらい残っているのかを予測し続けることです。
社長
今の状態だと、まずは利益を増やすことより、現金を残すことを優先した方がいいですか?
税理士
今はまず、手元の現金を確保することが最優先だと思います。
経費をできるだけ圧縮しながら、売却できる資産は数字を見て優先順位をつけて売却して、現金を確保する。
そのうえで数か月後にもう一度資金繰りを確認して、このまま返済を続けても大丈夫なのか、金融機関への相談が必要なのかを判断するのがよいと思います。
利益はもちろん大事ですが、会社は現金がなくなると続けられません。今はそこを一番に見ていきましょう。
利益と現金は、別々に確認する
損益計算書の利益は、会社の状態を見るうえでとても重要です。
ただし、利益が出ていることと、会社に現金が十分あることは同じではありません。
特に、
- 在庫を多く持つ
- 借入金が多い
- 売上より先に大きな支払いが発生する
- 売上から入金まで時間がかかる
という会社では、損益計算書だけでなく資金繰りも継続して確認する必要があります。
今回のポイント
- 利益が出ていても、手元のお金が増えるとは限らない
- 在庫が増えると、その分だけ現金が在庫に固定される
- 借入金の元金返済は損益計算書には経費として出てこない
- 資金繰り表は「いつ出て、いつ入るか」を把握するところから始める
- 会社経営では利益だけでなく、手元資金の残高を継続して見ることが大切
※この記事は、実際の面談内容をもとに、個人や会社が特定されないよう一部編集・一般化しています。