経営相談Q&A
「役員報酬、月30万円くらいで大丈夫でしょうか?」―独立直後の社長との面談から
会社員を辞めて、自分の会社から給与をもらい始めるときに考えること
会社を設立したあともしばらく会社員を続け、事業が少しずつ軌道に乗ってきたタイミングで独立する。
今回は、そんなタイミングを迎えた社長との面談から、自分の会社から役員報酬を受け取り始めるときに、何を考えておけばよいかをご紹介します。
社長
会社員を辞めることになったので、これからは自分の会社から給与を出そうと思っています。
今ある現預金と、すでに決まっている売上を考えると、月30万円くらいなら出しても大丈夫かなと思っているのですが。
税理士
生活費としていくら必要か、も大事ですが、まずはその金額を1年間払い続けても、会社のお金が回るかを見ておくのがよいですね。
今回は、
- 現在会社に残っている現預金
- すでに契約が決まっている売上
- 今後見込まれる利益
- 法人税などの納税見込み
- 会社の年間固定費
を見ながら確認していきました。
社長自身も、すでに確定している売上をベースに、役員報酬を払っても会社運営に必要な資金が残るかを計算されていました。
社長
できれば、今決まっている売上だけでも会社が回るくらいにしておいて、そこから新しい仕事が増えた分は会社に残していけたらと思っています。
税理士
その考え方はよいと思います。事業は予定どおりに進むとは限りません。思ったより売上が伸びないこともあれば、逆に予想以上に伸びることもあります。
ですので、最初から「これくらい売れるはず」で高めの役員報酬を設定するよりも、すでに見えている売上で無理なく払える金額を基準にしておくと安心です。
役員報酬は「手取り」だけで考えない
社長
月30万円にした場合、実際の手取りはどれくらいになるんでしょうか。
税理士
役員報酬からは、社会保険料や源泉所得税などが差し引かれます。
さらに会社側にも社会保険料の会社負担があります。
なので、会社の資金繰りを見るときは、本人負担分だけでなく会社負担分も含めて考える必要があります。
社長
会社員のときは、会社が社会保険料を半分負担してくれていたわけですよね。
税理士
そうですね。
独立すると、形式上は会社と本人で半分ずつですが、自分の会社なので、実質的には両方とも自分の会社のお金から負担することになります。
そのため、独立後は思っていたより手取りが少なく感じる方も多いです。
給与の「締め日」と「支払日」も決める
社長
支払日は20日にしたいと思っているのですが、締め日はどう考えればいいですか?
税理士
将来従業員を雇う可能性があるなら、締め日と支払日が近すぎると給与計算が大変になることがあります。
アルバイトの勤務時間、残業代、通勤手当、出張手当などを集計する時間が必要になるからです。
一般的には、月末締め・翌月20日払いのように、締め日から支払日まで少し余裕を持たせる形が使いやすいです。
社長
では、月末締め・翌月20日払いにしておきます。
税理士
はい、今は社長1人でも、あとから従業員が増えたときに給与サイクルを変えるのは面倒ですから、最初から将来も使いやすい形にしておくとラクですね。
役員報酬は「いくら欲しいか」より「1年間払えるか」
独立すると、つい
「自分の生活費としていくら必要か」
から役員報酬を考えたくなります。
もちろん生活費も大切ですが、会社経営としては、
- 今後の売上見込み
- 現在の現預金
- 税金
- 社会保険料
- 固定費
- 将来の採用や投資予定
も一緒に見ておく必要があります。
特に独立直後は、売上が安定するまで波があることもあります。
最初は、すでに見えている売上だけでも無理なく1年間払い続けられる金額を基準にすると、会社の資金繰りも安定しやすくなります。
今回のポイント
- 役員報酬は生活費だけで決めない
- 1年間払い続けても会社のお金が回るか確認する
- 社会保険料の会社負担も考える
- 給与の締め日・支払日も最初に決める
- 将来従業員を雇うことも考えて給与サイクルを決める
役員報酬は、一度決めれば終わりではなく、会社の利益や資金繰りとセットで考えることが大切です。
※この記事は、実際の面談内容をもとに、個人や会社が特定されないよう一部編集・一般化しています。